接客指導を行う際、接客指導にあたる人はロジカル、つまり理論的でなくてはいけません。

接客指導をすると言う事は、様々な知識や経験に基づき、その場の対応方法を新たに編み出す必要があります。そしてその対応方法を理論的に解説出来なくては、そしてその根拠を明確に伝える事が出来なくては、接客者は「どこをどう指導されたのか、よく解らない」まま終わってしまいます。

例えば野球や陸上など、スポーツの世界を見てみましょう。多くの選手達は、自分たちの体の動かしかたを理論的に理解しています。野球の場合、バットの振り方、バットを振る角度、バットの握り方、バットを振る力具合など、様々なことが理論化されていますし、選手達は自分のバッティングをビデオに撮り、繰り返し見る事で自分のバットを振るクセを理解してあともう一本のヒットを狙います。

同じように陸上の100m走の場合、空気抵抗の少ない走り方、腕の振り方、足を上げる高さ、地面の踏みしめ方などを理論化しており、それをミリ単位で調整しながら、わずか100分の1秒を縮めようと努力します。つまり、スポーツの世界で科学的にトレーニングをしている、と言う事ですね。

接客の世界でも同じ事です。指導者は自分の接客を科学的に見つめ直し、それを理論的にしなくてはいけません。「このタイミングで声を掛けるのだ」と言うのであれば、

  1. なぜそのタイミングなのか
  2. その時のお客さんの心理状況
  3. その時にかけるべき第一声と、その根拠
  4. 近付いていく角度と、その根拠
  5. そのタイミングでの声の大きさ

少なくともこれぐらいは全て、理論的に解説出来た方が良いでしょう。と言うのも、これらは全て接客者達が疑問に思っている事だからです。接客者達が疑問に思っている事を理論的に回答できてこそ、初めて接客者達は指導者の言う事が腑に落ちるのです。腑に落ちない回答を貰ったところで、接客者が納得することは無いでしょう。

プロ野球のバッティングコーチが少年野球の指導に行くと、少年野球の選手達は急激に打撃が良くなります。なぜなら打球が伸びやすいバットの振り方を具体的に教えて貰えるから。これは陸上でも同じ事が言えます。走るときの足の上げ方や腕の振り方を習うと、やはり急激に走る速度が上がります。接客指導者がしなくてはいけないのは、まさにこういう事なのです。

ただ、スキルといっても、接客にそこまで多くのスキルが必要かと言われれば、そうではありません。基本的なスキルさえしっかり押さえておけば、あとは接客者一人一人の人間性が売りのポイントに成り代わっていきます。

接客指導は原則として、ロジカルな世界です。いや、接客のみならずあらゆる仕事の指導は、そのほぼ全てがロジカル。例えばボクシングにしても、元世界チャンピオンに言わせれば「ボクシングの9割はロジックで出来ている」そうです。9割のトレーニングを徹底して積んでおけば、勝負を決めるのは残り1割のセンスと人間性。接客でも全く同じ事が言えます。

残った1割のセンスや人間性を鍛える方法はまた別の機会で紹介致しますが、いずれにせよ接客指導はまずロジカルな9割をしっかり押さえておかなくてはいけません。

お客さんの性格タイプ別対応法などが本やネットに記載されています。例えば「意思表示をされないお客様」の場合はこうした方が良い、「せわしないお客様」の場合はこうした方が良い、など。確かに内容としてはその通りなのですが、それは接客者が直感的に理解出来る事の筈ですし、別にいちいち解説するまでも無いレベルの事だと思います。むしろいずれのお客さんに応対するときでも、絶対的に共通した基本的な接客スキルを磨いた方が、よほど接客者のためになると言えます。

それと同時に、教え方そのものもロジカルに出来上がってなくてはいけません。でなくては、指導の度に違う事を言ってしまう可能性があり、それにより接客者達が困惑するからです。つまり物事を教えるには、教える段階と言うものがあります。その段階を外してしまうと、接客教えようとしているロジックも上手く伝わりません。

タイミングを外した教え方をすると、どうなるのでしょうか。接客者はそのロジックをいまいち理解出来ず、しかも「このロジックは難しい」と思い込んでしまいます。そうなると接客者はそのロジックに対して強い苦手意識を持ってしまい、改めてそのロジックを理解出来るようになるまでに、相当な時間を要してしまいます。こういった状況を招かないためには、まず教え方には順序があり、それを遵守することが大切になります。

弊社もやはり、教える順番についてはかなり研究を積んでおります。そうしなくては短期間で接客者に満足な指導を行うことが出来ないばかりか、接客指導者の育成など夢のまた夢となってしまうからです。

御社の接客指導はいかがでしょう?教える内容、教え方共にロジックが出来上がっていますか?