人は教養を身につけるべきです。人と動物の境界線がどこにあるかと言うと、それは「文化性」、つまり教養です。
道具を使う「文明的行為」は少々知恵の回る動物、例えば猿やカラスならば日常的に行っています。でも、芸術や文化などを愛する「美的センス」については、彼らは全くタッチしません。そこまで文化性が育っていないのです。
人が人間で有るか単なる動物であるかを明確に線引きするためには、やはり美的センスを有しているか否かに大きなポイントがあります。だから、人はその美的センスを養い、動物との違いをもっと明確に持つべきなのです。
現在、日本人は凄い勢いでその美から遠ざかろうとしています。世の中に安い物が溢れて、「本物」を味わう機会がめっきり減ってきています。美と言うのは、本物や一級品を知ることがなくては、二級品三級品との区別が付きません。
例えば最高級レストランに行ったところで、それまで三級品しか食べた事が無い人ならば、「美味しい~」だけで終わってしまいます。その価格の根拠を見出す事が出来ない。それでは「食事」と言う美を感じることなく終わってしまう。
最高級レストランでの味わい方をしっかりと理解しながら、一級品を味わう。それが出来てさえいれば、二級品、三級品を味わったときに、いかにそれが値段相応な物なのかが理解出来ます。最近は値段だけ最高級で、味わいは二級品なレストランも増えてきているから困りますね。むしろ一級品を出すレストランのほうが、意外と値段が安い場合だってあるぐらいです。
そういった事を理解することが出来るかどうかは、やはりその人の「美的センス」こと教養の高さにかかっています。つまり、いかに「人間らしい」か。
教養とは人が人である証。焼いて骨になれば「誰も皆平等」である事を知る事は出来ますが、脳みそがあり、血が流れている間は差があります。だから、人は少しでも教養を高めるべきなのです。安い物にばかり手を出すのは良いとは思えません。
時に高い物にも手を出し、その価値をしっかりと理解する。そうすれば、上には上があることを知る事も出来ますし、下もまた際限なくレベルが低い事にも気付きます。
私自身も、三級品にまみれて生活しています。ですが、一級品の有り難みを人並み以上には理解しているつもりです。毎日一級品に囲まれて暮らすような財力もなければそんな気もありませんが、少なくとも三級品であると言う認識を持ち続け、そこに甘んじない事が大切なのです。そこに教養の素が生まれます。
みなさんも、時には一級品を味わいましょう。そしてその一級品たる所以をしっかりと理解しましょう。一級品の理解の仕方は、マニュアルには書いていません。自分なりに体験し、理解するしかないのです。
人と動物の違いは、文化的・美的教養の有無にあります。