
小早川宗護 筆
私の思想の中で中核を成す物の一つに、「道」と「法」の棲み分けがあります。それを簡単に表す、良い言葉を思いつきました。
「法は倫より生じ、道は徳より生ず」
と読みます。
法と言うのは全体の統一感を生み出す為か、もしくは全体の統一感の中から自然と発生するもの。道と言うのはその真逆で、個人個人の徳から生み出される、人としての生き様。
「法は倫を生み、道は徳を生む」と読む事も出来ます。
多くの日本人は仕事に対しては道を、人との交流に対しては法を常に意識します。私が思うに、どちらかに偏ってはいけないのではないか、と。
良い仕事をするために道が必要なのは当然ですが、それにばかり頼ると単なる職人芸になってしまいます。全員が職人芸だと、全てが芸術作品になってしまい、規格品を大量生産することが出来なくなってしまう。だからそれを抑制するために、つまり大量生産をしやすくするためにも、法は必要。
だけど、接客はその限りではありません。接客を法できつく縛ってしまうと、心の交流が失われがちになってしまうからです。接客はどこまで行っても売り手と買い手の心の通い合いが大切。拙著内で接客マニュアルを厳しく非難しているのは、そういう理由からです。